建築家の色彩パレット

建築家が語る:空間を心地よく彩る、失敗しない配色の基本ルール

Tags: 色彩計画, 配色, インテリア, 建築家, 空間デザイン, 心地よい空間

空間の印象を決定づける色彩の力

私たちの日常生活において、空間の色は想像以上に大きな影響を与えています。特定の空間に入った瞬間に感じる「心地よさ」や「落ち着き」、「活気」といった感覚は、その空間に用いられている色彩計画によるところが大きいと言えます。

しかし、いざ自分の空間の色彩を考えようとすると、どのように色を選び、組み合わせれば良いのか、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。プロの建築家やデザイナーは、単に好きな色を選ぶのではなく、いくつかの基本的な考え方やルールに基づいて色彩計画を進めています。今回は、空間の配色において重要となる基本的なルールについてお話しします。

配色の「ベース」「メイン」「アクセント」という考え方

空間全体の配色を考える上で、まず私たちが意識するのは、色を役割ごとに分類するということです。一般的に、空間の色彩は大きく3つの要素に分けられます。

  1. ベースカラー(基調色): 空間の大部分を占める色です。壁、天井、床といった内装の基盤となる部分の色がこれにあたります。空間全体の雰囲気を決定づける最も重要な色であり、一般的には白やベージュ、ライトグレーといったニュートラルな色が選ばれることが多いです。この色は、他の色を引き立てるキャンバスのような役割を果たします。

  2. メインカラー(主調色): ベースカラーに次いで広い面積を占める色です。カーテンやソファ、大きな家具など、空間のテーマやコンセプトを表現する中心的な色となります。ベースカラーとの組み合わせで、空間の表情が大きく変わります。

  3. アクセントカラー(強調色): 空間に変化やリズムをもたらすために少量だけ使用する色です。クッションや小物、絵画、一面だけ異なる色の壁などに用いられます。空間全体が単調になるのを防ぎ、視線を引きつける効果があります。

これらの色の面積比率について、必ず守るべき厳密なルールがあるわけではありませんが、目安として「ベースカラー:メインカラー:アクセントカラー」を「70%:25%:5%」程度にするという考え方があります。このバランスを意識することで、空間全体にまとまりが生まれやすくなります。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、空間の用途やコンセプトによっては、メインカラーやアクセントカラーの比率を意図的に増やすこともあります。

失敗しないための具体的な配色パターン

基本的な色の役割分担を理解した上で、実際に色を組み合わせる際に役立ついくつかのパターンをご紹介します。

空間に応用するヒント:プロはこう考える

建築家が空間の配色を考える際には、これらの基本的なルールに加えて、様々な要素を考慮します。

まずは小さな一歩から

空間の配色を考えることは、難しく感じられるかもしれません。しかし、まずは「ベース」「メイン」「アクセント」という考え方で、自宅や職場の空間を捉え直してみることから始めてみてはいかがでしょうか。クッションの色を変えてみる、壁の一面にアクセントカラーを取り入れてみるなど、小さなことから試してみるのも良い方法です。

大切なのは、ご自身の感覚を信じることです。いくつかの基本的なルールを参考にしながらも、最終的にはその空間で過ごす方々にとって、最も心地よく、豊かな気持ちになれる色を選ぶことが、理想的な空間づくりに繋がると私たちは考えています。